Chapter 1: The Flag in the Recurring Dream

毎朝、目が覚める前に、旗がある。

遠い。手が届く距離ではなく、目が届く距離でもない。ただそこに在る、という確信だけがある。波の上、水平線のすこし手前、風に押されて翻り、翻り、翻り続けている。色は夢ごとに変わるが——あるときは薄い黄、あるときは嵐の前の空と同じ灰緑——旗そのものの存在感は変わらない。岩のように、あるいは約束のように、そこから動かない。

問題は、僕が動かないことだ。

足元を見ると、海ではなく、何もない。空白の上に立っている。正確には、立つべき何かが消えかけているような感覚、薄い氷の上に立っているような感覚、一歩踏み出せばそれが答えになるような感覚。だから踏み出さない。踏み出せないのではなく、踏み出さない。その区別が夢の中では重要な気がするのに、目が覚めると、どちらも同じことのように思えてくる。

これが、二十三年間の朝の始まりだ。

僕の名前はカイ。港町の図書館で働いている。

正確に言うと、図書館の二階建ての建物のうち、実際に人が訪れるのは一階だけで、僕が主に過ごすのは一階奥の書庫だ。表からは見えない場所。窓が一つあって、そこから港が見える。満潮のときは、遠く、白い泡が防波堤を越えるのが見える。干潮のときは、黒い岩が現れて、カモメが岩の縁に並ぶ。

書庫の匂いについて語るのは陳腐だ。でも正確を期すなら、古い紙の匂いというのは単一ではない。一九五〇年代の郷土史誌は樟脳と微かな潮の匂いがして、八〇年代に寄贈された文学全集は誰かの家の押し入れの記憶を運んでくる。湿気と埃と、もし本の中に言葉が詰まっているなら、それが少しずつ揮発している匂い。僕はそれを毎日吸っている。二十三歳の肺は、かなりの量の他人の物語で占められていると思う。

業務は単純だ。本を受け取り、分類し、棚に戻す。傷んだものは修復し、行方不明のものは検索し、誰も借りないまま十年が経った本には除籍の判を押す。日に三十人から五十人の利用者が来て、僕はその多くの名前を知っている。来館の習慣を知っている。どの棚の前でどのくらい立ち止まるかを知っている。でも彼らが読んだ本について話したことは、ほとんどない。僕が話しかけることも、彼らが話しかけてくることも、どちらも少ない。

静かな場所だ。静かであることが仕事でもある。

ゴロウ叔父のことを話さなければ、僕という人間の半分が説明できない。

叔父は六十二歳の元漁師で、港から少し離れた丘の中腹に一人で住んでいる。かつては船を持っていた。港に行けば古参の漁師たちが彼の名を知っている。何があったのかは、僕は知らない。正確には、聞いたことがない。聞ける機会があったかもしれないが、叔父の沈黙はそういう質問の形をした空気を、部屋に入る前に消してしまう。

両親を早くに失って、僕が叔父の家に来たのは七歳のときだ。叔父はそのとき四十六歳で、すでに船を降りていた。何年降りていたのかも知らない。彼の家に航海の痕跡はほとんどなかった。ロープの結び方の本が一冊あったが、それは本棚ではなく、台所の引き出しに収まっていた。

叔父は無口だった。無口だが、不親切ではなかった。ご飯を作った。洗濯をした。学校の送り迎えを、僕が嫌がるまで続けた。風邪をひけば額に手を当て、嵐の夜は雨戸を閉めた。ただ、海の話をしなかった。海の話が出そうになると、話題が変わった。窓の外が港に面していても、叔父の目はそちらを向かなかった。

子供の僕には、それが普通だった。大人というのはみな、何かについて黙っているものだと思っていた。叔父の沈黙が特別だとは思わなかった。

今は思う。でも、だからといってまだ聞けていない。

火曜日の閉館後、僕はいつも書庫で三十分ほど残業する。

返却された本を翌日の棚に戻す準備をするためだ。本を一冊ずつ手に取り、背表紙を確認し、正しい場所に並べる。単純な作業だ。考えながらやる必要がない。だから、考えてしまう。

今日、返却された本の中に、南太平洋の島々についての古い旅行記があった。一九六〇年代に出版されたもので、写真はモノクロで、文章は今の感覚からすると少し大仰だ。でも開くと、波の音が聞こえる気がする。写真の海は黒と白でできているのに、水の温度がある気がする。

僕はそれを五分間眺めた。それから棚に戻した。

正しい場所に。

窓の外では、夜の港が湿った風を受けていた。十一月が近い。漁船が暗い水の上に揺れて、岸壁の常夜灯がその影を延ばしている。このままにしておけば何時間でも眺めていられる景色だ。そしてその事実が、何かを物語っている。眺め続けることができるということは、立ち去る理由を僕がまだ作っていないということだ。

カバンに鍵を入れて、電灯を消して、裏口から出る。施錠する。振り返らない。家まで歩いて十二分。途中で八百屋を過ぎ、郵便局を過ぎ、廃業した食堂の前を過ぎる。食堂のシャッターは二年前から降りたままだ。オーナーが亡くなって、息子が都会にいて、引き継ぐ者がいない。

毎晩、そこを通る。毎晩、何も起きない。

これが秋の終わりの、ある火曜日の夜明け前までの話だ。

その夜、眠る前に、僕は窓を少し開けた。

潮の匂いが入ってきた。十一月の潮は夏と違って、何かが澄んでいる。冷たくて、遠くから来た匂いがする。どこかで嵐が起きているのかもしれない、と思った。港の常夜灯が風に揺れているのが、カーテンの向こうに見えた。

目を閉じる。

また旗がある。今夜の旗は薄い青みがかった白で、風に引っ張られて水平線の方角へ伸びようとしている。海は静かではない。でも旗は揺れながら揺れながら、そこを動かない。

僕の足は、動かない。

夢の中で、僕はいつも自分が動けない理由を探そうとする。恐怖なのか。疲労なのか。あるいは何か、もっと正確な言葉がある感覚なのか。答えは見つからないまま、旗は遠ざかりもせず、近づきもせず、ただ翻り続ける。

翌朝、目が覚める。

旗は消えている。

潮の匂いだけが、まだ部屋に残っている。

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Chapter 1: The Flag in the Recurring Dream — 漂流する旗の下で | GenNovel