依頼人が来たのは、月曜日の午前十時だった。
透は二階の小部屋で誠一郎の報告書の写しを読んでいた——猫の件を、誠一郎がどういう文体で記録するかを確認するための作業だった。読み終えて気づいたことがある。報告書の中で、誠一郎は自分の観察を「依頼人への聞き取りによって判明した」と書き換えていた。透が指摘した右前足の跡については一行も触れていない。
隠蔽ではない。単純な書き直しだ。誠一郎は、他人の仕事を自分の報告書に混入させることに対して、ある種の不快感を持っている。その不快感の向けられる方向が、透は気になった。透の存在への不快感なのか、あるいは事実の歪曲への不快感なのか。
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