夜が明けたかどうか、コにはわからなかった。
幽霧の湯に窓というものが存在するかどうか、確かめる暇もなかった。老番頭に案内された部屋は小さく、蒲団は一枚きりで、壁の板材がわずかに腐った匂いを含んでいた。横になった覚えはあったが、眠った覚えはなかった。それでも目が開いていたとき、部屋の空気が少しだけ変わっていて——湿度が上がり、どこかに灯が点ったような気配がした。朝というものが、光ではなく気配として訪れる場所だということを、コはその朝初めて知った。
障子が開いた。
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