Chapter 1: Awakening in the Dark Forest

天井から音がしていた。

低く、規則的な電子音——まるで巨大な機械が呼吸しているような、無機質な拍動。夜神月はその音を意識の底で認識しながら、まず目を開かなかった。

経験から学んだことだ。目覚めた瞬間に動くな。まず聴け。嗅げ。皮膚で感じろ。情報は行動より早く死を遠ざける。

消毒薬の匂い。病院ではない——もっと金属的な、空気そのものが濾過されているような清潔さだ。背中に触れているのは硬い素材の寝台で、布団はなく、薄い毛布一枚。室温は適切に保たれているが、人間の快適さへの配慮ではなく、精密機器の維持管理に最適化された温度だという印象がある。

遠くで誰かが囁いている。英語と、もうひとつ——中国語か。

月は目を開けた。

白い天井。蛍光灯ではなく、均一に発光するパネル。影がない。どこにも影が存在しないほど、光源が完全に分散されている。部屋の四隅にカメラ——計四台、いや、明らかな位置に三台と、換気口の格子の後ろに隠された一台。観察している側は、自分たちが観察していることを知られても構わないと思っている。あるいは、知られることを意図している。

ゆっくりと身を起こす。

自分の手を見た。

五本指、すべて揃っている。手首の静脈が青く透けて見えるほど白い肌。これは自分の手だ。確かに自分の手だが——何かが欠けている感覚がある。目に見えない鎖が外れたような、あるいは目に見えない翼をもがれたような。

デスノートがない。

その認識は静かに到来した。驚愕でも恐慌でもなく、むしろ積年の病が完治したと医師から告げられたときのような——信じるには実感が遅すぎる、奇妙な空白。あのノートは自分の掌中にあったはずだった。最後の記憶では——

最後の記憶。

月は思考をその一点に向けて絞り込んだ。倉庫、銃声、Nの声——Near、あの白い蜘蛛のような少年——そして自分の胸を貫いた熱。それ以降は何もない。闇でもない、無でもない。ただ、何もない。

まるで章と章の間の空白のページのように。

「お目覚めですか」

声は左側から来た。

月は首を動かした。ガラス越しに、廊下に面した観察窓の前に三人が立っている。手前の一人は東洋人の女性で、白衣を着ているが医師の雰囲気はない。その後ろに中年の男——欧米系、短く刈り込んだ白髪、軍の将校か政府機関の高官か、その体の緊張の仕方が命令を出すことに慣れた人間のそれだ。一番奥の人物は逆光で顔が見えない。

「聞こえますか」女性が続けた。日本語だった。完璧な、むしろ不自然なほど完璧な発音。「あなたは安全です」

安全。その言葉が持つ意味のなさを月は瞬時に計算した。安全を保証する必要があるということは、安全でない状況を想定しているということだ。保護者が「心配しなくていい」と言うとき、それは常に相手を心配させるための言葉として機能する。

「どのくらい眠っていましたか」月は言った。

女性が微かに表情を変えた——「あなたは大丈夫ですか」と問い返すことを期待していたのだ。初めての刺激に対する反応は予測可能なパターンを外れた。奥の男が何かを手帳に記している気配がする。

「七十二時間と十四分です」と女性は答えた。「栄養補給のカテーテルを外させてください。もう不要でしょう」

三日以上。月は室内を改めて見渡した。ベッドの脇に折り畳み式のテーブル、その上にプラスチック製の容器と水のボトル。ベッドの向こう側の壁——

止まった。

壁に、時計があった。

時計と呼ぶには大きすぎる。壁面の三分の一を占める電光掲示板のようなもので、そこには数字が表示されていた。

四一二年 〇八ヶ月 一四日 二二時間……

秒単位で減っていく。カウントダウン。

月は数字を見つめた。まず頭の中で計算した——四百十二年と八ヶ月。そのスケールは即座に何らかの人間的な文脈での意味を排除する。政権交代でもない、戦争の終結予定でもない。このタイムスパンで人類が使うカウントダウンは、彗星の衝突か、あるいは——

「三体艦隊の到達予測時刻です」

声は女性のものではなかった。ドアが開いていた。月は気づかなかった——換気システムの音に紛れて開いたのか、それとも自分が壁の数字に一瞬集中しすぎたのか。どちらにせよ、看過できない失態だ。

入ってきた人物は老齢の女性だった。七十代後半か、あるいはそれ以上——しかし足取りに迷いがない。白いコートを羽織り、手には何も持っていない。顔の皺は深く、しかし目は、何十年もの疲労と何十年もの観察を同時に蓄積した目だ。

「三体」と月は言った。「別の恒星系の文明ですか」

「アルファ・ケンタウリ系の第四惑星を母星とする知的生命体です」老女は答えた。椅子を引きもせずに、月の視線の高さに立ったまま話す。「彼らは私たちの文明の存在を知っています。そして四百年後、この太陽系に到達します。その時点で、人類が生き残れるかどうか——現在の推計は悲観的です」

「あなたが彼らに場所を教えたのですか」

沈黙。

長い沈黙だった。廊下のガラス越しに、白衣の女性が白髪の男に何か耳打ちしている。老女の表情は変わらない——しかし変わらないこと自体が答えだと月は読んだ。否定する必要を感じていない人間の顔だ。あるいは、否定という行為をずっと昔に手放した人間の。

「葉文潔」と月は言った。「国連の危機対応施設の資料にあなたの名前があるはずです。もしなければ、あの壁の外のどこかに」

老女は初めて、ほんの僅かに眉を動かした。「私を知っているのですか」

「知りません。今この瞬間まで」月はゆっくりと足を床につけ、立ち上がった。「しかしあなたが最初に私に話しかけたということは、私に対して固有の関心がある。医療スタッフでも政府関係者でもない——観察者です。それほどの年齢で、それほどの疲労を顔に刻んで、なお施設の中枢ではなくここにいる理由は、義務ではなく個人的な動機です。そしてあの数字——あのカウントダウンを私に見せることを、あなたは許可した側にいる」

月は立って、改めて部屋を見た。

窓の外には廊下があり、廊下の向こうには別の部屋がある。その部屋の窓から空が見えた。曇天。雲の形から高度は相当高い——山岳地帯か、あるいは海抜の高い都市か。建物の構造は国際機関の施設に特有の均質さを持っている。

「ニューヨークではない。ジュネーブでもない」月は呟いた。「北京? いや、建築様式が違う」

「北京郊外です」葉文潔が言った。「国連緊急対応特別施設、通称『天網』」

「私はどこから来たことになっていますか」

「太平洋上空で発見されました」老女の声は静かだった。「パラシュートも降下装備も持たず、高度一万二千メートルを漂っているところを気象観測機が発見した。あなたは凍傷を負っておらず、酸素欠乏症の痕跡もなく、ただ意識を失って漂っていた。それ以上の情報は、現時点で誰も持っていません——あなた自身を含めて」

月は聞きながら、室内の別の細部を拾い続けていた。ドア脇の電子ロックのモデル。床の素材。壁に埋め込まれた通気口の間隔。逃げるなら——いや、今逃げる理由はない。逃げることが有利になるのは、ここにいることが不利になった場合に限る。現時点ではその逆だ。

この施設には情報がある。資源がある。そして目的がある。

壁のカウントダウンを再び見た。四一二年と八ヶ月と十四日と、今この瞬間も減り続けている時間。

四百年。人類の存亡を賭けた四百年。

知性というものは本来、スケールに怯えない。むしろスケールが大きくなるほど、それを把握できる知性の価値は増す。月はこの宇宙規模の方程式を脳の中で概観した——文明と文明の衝突、生存を賭けた戦略、欺瞞と抑止力と、見えない力学。

これは、自分がこれまでに直面したどんな問題よりも大きい。

それだけだ。

大きいということは、解けないということではない。

「私に話しかけにきた理由を、まだ聞いていませんね」月は葉文潔に言った。「私が何者か、本当に知りたいのならもっと適切な手段があるはずです。直接来たということは、私が何者かをある程度知った上で——あるいは知っているつもりになった上で——確認しにきた」

老女は月をしばらく見た。その視線は品定めでも好奇心でもない。もっと静謐な、ほとんど学術的な観察だった。長年にわたって人類を遠くから眺め続けた目の色をしていた。

「人類は今、面壁者計画を準備しています」葉文潔は言った。「三体文明の監視を欺くことができる、特別な権限を持った少数の人間を指名する計画です。彼らには嘘をつく権利が与えられる——人類全体を守るための嘘を」

「それで?」

「あなたがどういう人間か、私には分かりません」老女の声は相変わらず静かだった。「ただ、あなたがどういう目をしているかは分かる」

月は何も言わなかった。

「その計画に関心はありますか」

廊下のガラスの向こうで、白衣の女性と白髪の男が息を呑んだのが視界の端に映った。この会話は録画されている。録音されている。しかし葉文潔は構わずに話を続けた——構わないというより、それを既に織り込んだ上で、それでも尋ねている。

月はもう一度、壁のカウントダウンを見た。

四一二年。

デスノートはない。リュークもいない。神としての特権も。

あるのは、この頭脳だけだ。

この宇宙で最も危険な武器が、今この瞬間、新しい獲物を見つけた。

月は葉文潔に向かって、微笑んだ。

久しぶりの笑顔だった——それが自分でも分かるほど、筋肉が一瞬だけ動作を思い出すのに時間を要した。しかしひとたび浮かんだそれは完璧だった。温かく、誠実に見え、そして奥底に何があるか、どんなカメラにも映らない。

「もちろん」と夜神月は言った。「人類の未来について、いくつかお話ししたいことがあります」

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Chapter 1: Awakening in the Dark Forest — 暗黒の審判者——夜神月と三体の福音 | GenNovel