Chapter 1: The Door That Always Brings You Home

野々村ノブオの部屋は、六畳間というよりも六畳分の混沌だった。

消しゴムのかすが教科書の隙間に積もり、折りかけた紙飛行機が本棚の上で三週間休眠しており、窓際の棚には壊れた置き時計がなぜか二台並んでいる。どちらも違う時刻を指して止まっている。どちらも正しくない。

その部屋の隅、プラモデルの箱と読み終えていない図鑑のあいだに、ドランはいた。

体長は手のひらほど。素材は艶消しの銀。目のある場所に二つの発光点があり、それが感情を表すのかどうかはノブオにもわからなかった。わからないままにしておくことに、ノブオはすでに慣れていた。

「野々村ノブオ」とドランは言った。声は電子的だが音量は控えめで、取扱説明書を音読するような調子だった。「本日、使用可能な道具が追加されました」

「また道具か」

「道具です」

ドランが胸のあたりに手を——腕と呼ぶべき何かを——差し込むと、そこには物理的に収まるはずのない空間があった。引き出しのような、あるいは底のない封筒のような。そこからドランが取り出したのは、折り畳まれた薄い扉だった。

展開すると、子供の背丈ほどの高さになる。色はありふれた木目調。丸いノブ付き。どこにでもある、どこにもつながっていなさそうな扉だった。

ドランは一枚の紙片を差し出した。

【どこでもドア 型番DW-07 取扱説明書】

使用者が「行きたい場所」を明確に念じた状態でノブを回すと、指定地点への最短経路が開通する。電池不要。折り畳み可能。返却期限なし。

注意事項については別紙を参照のこと。

「別紙は」とノブオは聞いた。

「同封されていませんでした」

ノブオは扉を眺めた。隣の部屋では母親がテレビのボリュームをわずかに下げた。廊下から昨日のカレーのにおいがかすかに漂ってくる。

「学校に行ける?」

「行けます」

「二十分かかるんだよ、歩いて」

「最短経路が開通します」

ノブオは翌朝、七時五十二分に扉を立て、三組の教室を念じ、ノブを回した。

扉の向こうは廊下の喧騒だった。くつのにおい。黒板消しの粉。誰かが廊下を走っている音。正確に自分のクラスの前だった。

ノブオは一歩踏み出し、振り返ると扉はもう消えていた。二十分が八秒になった。

その日の帰り、ノブオは再び扉を立てた。家を念じ、ノブを回した。

最初の家は、九十七パーセント正確だった。

廊下の幅、台所の位置、風呂場から聞こえる排水の音。テレビのニュースキャスターの声。カレーのにおい——今日もカレーか、とノブオは思った——すべてが合っていた。

ランドセルを置き、手を洗い、食卓についた。

母親が夕食を並べながら「宿題は」と聞いた。

「やる」とノブオは答えた。

「先週も同じこと言ってたけど」

これも合っていた。

ただ。

箸が一膳、多かった。

食卓に四人分の箸が並んでいる。この家は三人家族のはずだった。ノブオは箸を数えた。もう一度数えた。

母親はそれに気づかないまま茶碗を置いた。父親がソファから「飯か」と言った。声の質は合っている。顔も合っている。

ノブオは黙って食べ、ごちそうさまを言い、自分の部屋へ行った。

ドランの定位置——プラモデルの箱と図鑑のあいだ——が、空だった。

ノブオは三秒考え、階段を降り、もう一度扉を立てた。

二軒目の家は、九十四パーセント正確だった。

今度は箸が足りなかった。二人分しかない。父親の上着が玄関にない。テレビの音量がいつもより三目盛り大きい。

夕食は——またカレーだった。

「遅かったね」と母親が言った。

「ちょっと寄り道した」

「どこに」

「そこらへん」

母親はそれ以上聞かなかった。この点は合っている。

ノブオはカレーを半分食べて「腹いっぱい」と言い、部屋に戻った。

ドランはいた。しかし台帳のような何かを開いていて、ノブオを見ずに言った。「野々村ノブオ、帰還を確認しました」

「本当に帰ってきたのか、俺は」

「定義による」とドランは答えた。

ノブオは天井を見た。染みの形が違う。左の角にあるはずの染みが、この部屋では右の角にある。

再び扉を立てた。

三軒目の家のカレーは、少し薄かった。

ニンジンが大きめに切ってある。じゃがいもが少ない。母親の声のトーンが半音ほど高い。

「おかわりは」

「いらない」

「食欲ないの」

「三回目なんだよ今日のカレーが」と言いかけて、ノブオは飲み込んだ。

食後、風呂に入り、歯を磨き、布団を敷いた。天井の染みを確認する。右。違う。

窓の外、隣の家の二階に明かりがついている。シズの部屋だ——どの家でも、その位置だけは同じだった。カーテン越しに人影が動く。

ノブオは窓際に立ち、扉を手に持ったまま、その光を少しのあいだ見ていた。

それから四回目の扉を立てた。

四軒目の家は、染みが左の角にあった。

ランドセルが自分の位置に掛かっている。壊れた置き時計が二台。折りかけの紙飛行機。プラモデルの箱と図鑑のあいだに、艶消しの銀色の小さな体。

ドランはノブオを見て言った。「帰還を確認しました」

「さっきも言ってたぞ」

「別の帰還です」

ノブオは布団に倒れ込んだ。天井の染みは左の角にある。形は五日前に確認したときと同じだ。雲に似ているとも魚に似ているとも言えるが、どちらでもない。

「あの扉、行きはちゃんと動く」とノブオは天井に向かって言った。「帰りがおかしい」

「仕様の範囲内です」

「別紙に書いてあったか」

「別紙は同封されていませんでした」

廊下から母親の声がした。「ノブオ、宿題は」

「やる」とノブオは答えた。

いつもと同じ声だった。音量も、間合いも、期待の薄さも。

ノブオは目を閉じた。昨日のカレーのにおいが、うっすらと部屋まで届いている。

これが正しい家だ、とノブオは思った。においで判断するのは情けないが、においはごまかせない。

扉は翌朝まで、折り畳まれて枕元に立てかけられていた。ドランは台帳に何かを記録し、発光点を消した。部屋は静かだった。置き時計は二台とも、ちがう時刻で止まったままだった。

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