西村から電話が来たのは、翌朝の七時十二分だった。
桐島はまだ事務所にいた。家に帰っていなかったわけではなく、六時前に一度戻って顔を洗い、着替えて、また鍵をかけて出てきた。眠れなかったというより、眠ることに使える時間が見当たらなかった。長谷川の話が頭の中で続いていた。植物の話、図書館の話、コンビニの話。事実の断片が並んでいるのに、中心に穴がある。穴の形だけはわかる。しかし穴の中に何があるのかが、まだ見えない。
電話が鳴った瞬間、桐島はそれが西村だとわかった。着信音ではなく、時刻の感覚として。七時台の西村の電話は、仕事の話しかしない。
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