翌朝、千草は廊下で初めて澄に会った。
正確には、廊下のある一点で千草が向きを変えたとき、澄はすでにそこにいた。松の香りが強くなる脱衣所の手前と、奥の湯殿へ続く廊下が直角に交わる角のあたりで、彼は手拭いを抱えていた。抱える、というのも少し違う。積み重ねられた手拭いを両腕に乗せ、それをただそこに在らせているという様子だった。運んでいる、というより、手拭いが彼の腕を借りて移動しているという感じで、本人はその移動にわずかにつき合っているだけのように見えた。
千草が足を止めたのは、ぶつかりそうだったからではなく、その静けさに引き止められたからだった。
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