金曜日の夜は、他の曜日とは違う匂いがする。
週の疲れと解放感が混ざり合い、六本木の空気はより粘度を増す。タクシーの行列が交差点を塞ぎ、ヒールの音が石畳に刻まれ、どこかから溢れ出たシャンパンの笑い声が夜風に乗って散っていく。月光院のエントランスでは、黒服が三人、完璧な間隔で立ち、入店を希望する客を選別する。選別、という言葉を彼らは使わない。「ご案内」と言う。しかしそれは選別だ。
六条マリアンヌが来たのは、二十二時を七分過ぎたころだった。
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