私は、うまく笑う方法を知っている。
これが私の最初の告白だ。笑い方を知っている、というのは、笑いが自然に出てくるという意味ではない。まったく逆だ。私は鏡の前で練習したことがある。唇の端を何ミリ持ち上げるか、目尻にどれほどの力を込めるか、どのくらいの速さで息を吐けば、ちょうど感動したように聞こえるか。あの頃の私は十三歳で、壁の訓練兵団に入団して間もなかった。同期の少年たちは夜になると家族の話をして、泣いたり笑ったりしていた。私は彼らの横で、暗闇の天井を見上げながら、自分がなぜ泣けないのかを、誰にも悟られないように考え続けていた。
今の私は二十歳だ。調査兵団に所属して三年になる。笑い方は完璧になった。
訓練場の土は乾いていて、踏むたびに白い埃が膝まで舞い上がった。八月の太陽が壁の内側に降り注ぎ、訓練着の背中を汗で張り付かせていた。私はバランスワイヤーの上を走りながら、心の中で手順を数えていた。右足、重心、回転、着地。体が先に知っている動きを、意識はただ確認するだけでいい。
「カイト、もっと腰を落とせ!」
立哨台の上から班長代理のセナ・リカが怒鳴った。彼女の声は野太く、壁に当たって跳ね返ってくるほどだった。私は言われた通りに腰を落とし、ワイヤーの揺れに身を任せた。揺れは思ったより大きかったが、転ばなかった。転ばない、というのが私の取り柄の一つだ。死なないための最低限の能力、とでも言うべきか。勇敢さではなく、ただの習慣として、私は生き延びてきた。
着地の瞬間、土が足裏から突き上げてくる感触があった。膝が軋んだ。私は次の動作へ移りながら、ふと壁を見上げた。
壁は、いつ見てもおかしいほど巨大だ。
高さ五十メートル。幼い頃、初めてウォール・マリアを見た時、私は父親の手を握ったまま首を後ろに反らせ、てっぺんが見えないことに気づいて奇妙な安堵を覚えた。見えないほど高い壁が、外の怪物から私たちを守っている。そう思えば恐怖はいくらか遠のいた。しかし今は、あの壁の向こう側を知っている。荒野と廃墟と、のそのそと歩き回る巨人たちの、膨れ上がった白い肉体を知っている。そして壁は高さを少しも変えないまま、相変わらずそこに立っている。守っているのか、閉じ込めているのか、私には区別がつかない。
「よし、全員集合!」
リカの声で、散らばっていた隊員たちが訓練場の中央に集まった。汗と土埃と、誰かが踏んだ草の匂いが、風のない空気の中に重なっていた。私は列の端に立ち、まっすぐ前を向いた。
リカは列を見渡して、満足そうに腕を組んだ。彼女の茶色い髪は結い上げてあったが、何本かがほつれて顎のあたりで揺れていた。体格は小柄だが、立っている時の密度が違う。彼女が場所を占めると、そこに確かに何かが宿るような気がした。私にはそれが何なのか、正確には分からない。信念、とでも呼べばいいのだろうか。
「今日の訓練はここまで。お疲れ様」
それだけ言って、リカはにやりと笑った。その後に何かが続くのを、私は予感で知っていた。彼女の笑い方には、前置きになる種類とそうでない種類がある。これは前置きの笑いだった。
「ところで」と彼女は言った。「私、海が見たいんだよね」
隊員の何人かが顔を見合わせた。ヴィリー班から移動してきたばかりの新入り、ヨルク曹長が「海、ですか」と繰り返した。
「海」とリカは確認するように言った。「壁の外、ずっとずっと遠くにあるって話。全部が水でできてて、端っこが見えないくらい大きくて、波の音がするんだって。誰かに聞いたことがある。塩辛いらしい」
「なんで塩辛いんですか」とヨルクが言った。
「知らない。でもそういうもんらしい」リカは肩をすくめた。それから少し真剣な顔になって、前を見た。訓練場の先、壁の向こうを見ているような目だった。「私は絶対に見ると思う。この壁の外に出て、ずっと走って、海の前に立つ。それが決まってる気がするんだよね」
静寂があった。
それから、誰かが拍手をした。ヨルクだった。他の数人が続いた。笑い声も混じっていたが、馬鹿にする笑いではなかった。彼女の確信の強さが、その場の空気をほんの少し変えていた。私にはそれが分かった。空気の変化を感じ取ることは、私が得意とする数少ないことの一つだ。
私も笑った。
口の端を適切な角度に引き上げ、目に適切な温かさを宿し、適切なタイミングで首を縦に振った。内側には何もなかった。リカの夢が眩しいとは思った。眩しい、というのは感情ではなく知覚だ。目を細めたくなるほど強い光が、そこにある。ただそれだけのことだ。私はその光に打たれて感動したふりをするのが、うまい。
「いいな」と私は言った。声の温度も、ちゃんと調整した。「絶対に連れて行ってもらうよ」
リカは「当然」と言って、私の肩を叩いた。力強い手だった。
夜になった。
兵舎の窓から見える空には雲が出ていて、星は隠れていた。雨が来るかもしれない。私は夕食の食器を返却した後、中庭を横切ろうとして、石畳の上に雨水が薄く溜まっているのに気づいた。
足が止まった。
私は水たまりを見下ろした。
そこに顔があった。私の顔だ。歪んで、波打って、それでも確かに私の顔が水面に映っていた。短く切った黒髪、少し落ちくぼんだ目、特に特徴のない鼻と唇。私はその顔を見つめ、その顔が何を表現しているのかを、判定しようとした。
悲しんでいるのか。疲れているのか。怒っているのか。
分からなかった。
どれでもないように見えた。どれでもあるようにも見えた。水面が微かに揺れるたびに顔が変形し、それが私の表情なのか水の歪みなのか判断できなくなった。私はしばらくそのまま立っていた。冷たい風が中庭を抜けた。石畳が足元から冷えていた。
母の顔を思い出そうとした。
思い出せた。まだ思い出せる。丸い輪郭と、黒い髪と、笑うと目が糸のように細くなるあの表情。私が熱を出した夜に額に乗せてくれた手の、ひんやりとした感触。穀物を煮る匂い。何でもない午後の光。それらはまだある。まだ持っている。
ただ、彼女が食べられた日に自分が何を感じたか、それだけがない。
思い出せないのではない。最初から、なかった。
私は水たまりの顔を見た。その顔は何も言わなかった。その顔が何を感じているか、その顔自身も知らないようだった。
どこかの部屋の窓が開いて、誰かが笑い声を上げた。私は顔を上げた。水面の像が揺れて消えた。
翌朝、整列命令が出た。
調査兵団第四分隊の全員が練兵場に集められた。空は白く、まだ霧が残っていた。アシュフォード団長が壇上に立ち、私たちを見渡した。白髪交じりの、がっしりとした体格の男だ。顔の造作は荒削りだが、目だけが静かだった。深い水の底のように、揺れない静かさだった。
「第五十七回壁外調査の出発を、明後日に決定した」
声は低く、ゆっくりとして、しかし壁に届くほど響いた。
「目標地点はウォール・マリア外縁東部。期間は十日間を予定する。各自、装備の最終確認を今日中に済ませること」
それだけだった。団長は壇から降りた。私の隣でリカが、小さく深呼吸をするのが聞こえた。私は前を向いたまま、腰の刃に手を当てた。
鉄の冷たさが指先に伝わった。
手は震えなかった。震え方を知らないからではなく、震えるべき何かが自分の中に見当たらないからだ。恐怖があるべき場所に、静かな空白があった。私はその空白を確認して、うまく整列した兵士の顔を作った。
壁外だ、と誰かが囁いた。
壁外。ウォール・マリアの向こう。巨人が徘徊する荒野。死が具体的な顔を持って歩き回っている場所。
私の胸は、空洞の太鼓のように、音もなく静まり返っていた。
そして私は、恐ろしいことに気がついていた。
怖くない、ということが、怖いのではない。
怖くない自分を、私は少しも不思議だと思っていない。それが一番おかしいことだと、頭では分かっていた。人間は死を恐れるはずだ。人間は失うことを悲しむはずだ。しかし私の「はずだ」は、いつも本体を欠いたまま、ただ正しい形だけを保っている。剥製の感情、と呼んでもいい。羽毛も脚も正確に再現されているが、飛ぶことがない。
私はまた笑った。今度は誰も見ていなかったが、それでも笑った。習慣とは恐ろしいものだ。客がいなくても幕が上がる劇場のように、私の顔は誰のためでもなく表情を作り続ける。
壁外調査。五十七回目。
私は調査兵団の一員として、そこに行く。剣を振るい、生き延び、帰ってくる。なぜ生き延びるのかという問いには、今日も答えが用意されていない。しかしその問いを抱えたまま走ることには、すでに慣れている。
問いを抱えて走る。それが私という人間の、唯一確かな輪郭だった。