老女は布袋の口を締めなかった。
立ち上がりもせず、螺人に目を向けもせず、ただ手元を探るようにして袋の中から紙の束を取り出した。的台の前に火が必要だということを、螺人はその動作で初めて理解した。老女が提灯を地面に置いたのは、明かりのためではなく、ものを燃やすための最初の火種として使うためだった。
廃屋の隅に錆びた鉄の器があった。かつては何かを煮るために使われたものか、あるいは訓練の道具だったのか、螺人には判断がつかなかった。老女はそれを膝元に引き寄せ、提灯の小さな火を器の底に移した。動作に無駄がなかった。これもまた、繰り返された行為の蓄積だった。
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