霧の中の忍び——ある落第者の手記

霧の中の忍び——ある落第者の手記

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Synopsis

木ノ葉隠れの里、とある梅雨の夜。忍者学校を三度落第した少年・渦森螺人は、試験官に「貴様には資質がない」と言い渡され、廃墟となった旧訓練場の軒下に雨宿りをする。そこで彼は、朽ちかけた木製の標的に貼り付けられた、古い忍者名簿を剥がす老女を目撃する。老女はかつて優秀な忍者として名を馳せた者たちの記録を丹念に破り取り、煮炊きの燃料にしようとしていた。螺人が問い詰めると、老女はこう答えた——「英雄の名など、腹の足しにもならぬ。里は彼らを使い捨て、私もまたそうされた。紙切れを燃やして何が悪い」と。螺人は憤る。しかし夜が深まるにつれ、彼自身の心の奥底に蠢く或るものに気づき始める。己が「落ちこぼれ」として里から排除されてきたこと、体内に封じられた異形の力が「資質」ではなく「道具」として扱われてきたこと、そして師匠たちが口にする「仲間」「使命」「忍道」という言葉が、権力者の意志を包む美しい包装紙に過ぎないのではないかという疑念。夜明けが近づいた時、螺人は老女の燃料袋を奪い、雨の中へ消える。それが善なのか悪なのか、彼自身にも判然としない。霧の向こうに、里の灯りが滲んで見えた。

Chapters (18)

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