Chapter 9: The Matron's Archive, and the Names Kept There Like Pressed Flowers

湯婆婆の私室の掃除を命じられたのは、翌週の木曜日の朝のことである。

命令を下したのは颯斗だった。そこに悪意があったかどうかを吾輩は断言しない。颯斗は悪意というものを日常の業務行為として使う人間ではない。ただし善意もまた、結果において悪意と区別がつかなくなることがあるという事実について、颯斗はまだ充分な教育を受けていない。颯斗が澄に「今週の特別清掃の担当表に君の名前が入っている」と告げたとき、その言い方は朝の挨拶と変わらないほど平静だった。澄も同じ平静さで頷いた。二人の平静さは同じ種類ではなかったが、そのことを指摘できる人間がその場にいなかった。

吾輩はいたが、吾輩は指摘しない立場を維持している。維持に要するエネルギーについては、特に言及しない。

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Chapter 9: The Matron's Archive, and the Names Kept There Like Pressed Flowers — 吾輩は奉公人である | GenNovel