朝が来た。
忘我の湯が三百年の間に迎えた朝の数を、わたしは正確に知っている。それは十万九千五百余りである。どれも似たような朝だった。東の空が白み、大釜から最初の蒸気が上がり、女中たちが廊下に出て雨戸を繰る音が順番に建物を一巡する。その音の順番は、この三百年で六度しか変わっていない。
今朝も、その音は来た。
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