霧が何かを隠していた。
それは確かなことだった。霧はいつもそういうものだ、と私は思う。霧というのは存在を隠すために生まれてきたのかもしれない。巨人の腐りかけた輪郭を白く包んで、廃村の崩れた屋根を滲ませて、私たちの行軍する草原をどこまでも続く一色の曖昧さに変えてしまう。霧の中にいると世界の解像度が落ちる。輪郭が溶ける。それが怖いと思う人間と、それが楽だと思う人間がいる。私はたぶん後者だったが、その事実を誰にも言ったことはない。
廃村を抜けた後、隊列は南東に折れた。
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