Chapter 2: Kirishima Saku Accepts a Contract He Does Not Fully Read

霧島朔がその依頼を受け取ったのは、水曜の夜十一時過ぎ、インスタントコーヒーが三杯目に差し掛かった頃だった。

ディスプレイの光だけが部屋を照らしている。カーテンは閉まっている。外がどんな天気かは知らない。六本木のワンルームは、引っ越してきた日から一度も模様替えをしていない。それは几帳面のせいではなく、いつでも引き払える状態にしておくためだ。本人はそれを「流動性のある居住スタイル」と呼んでいる。

暗号化されたメッセージが届いたのは、いつも使っているチャンネルではなかった。新規のルート、送信者不明、IPはどこかの中継サーバーを三つ経由している。面倒くさい、と霧島は思った。ただし、面倒くさいことをわざわざやる人間には、たいてい相応の理由がある。

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