霧島朔は、浴室のドアを閉めてから作業を始めるという習慣を持っていた。
理由は単純だ。浴室のドアには鍵がかかる。賃貸の部屋のドアには、たいていかからない。
コルクボードを浴室の壁に固定したのは今から三週間前で、画鋲は十八本、マスキングテープは四色を用途別に使い分けている。このボードを見た人間が、これはシャワーカーテンレールに吊った作業台と浴槽の縁を足場にしないと全体を見渡せないという事実に気づくまで、普通は三秒ほどかかる。霧島は最初から浴槽の縁に乗って作業するつもりでこの配置にした。足場の悪さが集中を助けるという個人的な発見による。
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