名札が届いたのは、昼過ぎのことである。
配達したのは湯守の一人で、五十がらみの、顔の皺が笑い皺なのか労働の皺なのか判別のつかない女であった。彼女は賄い場の片隅で汐が椀を洗っているところへ無言で近づき、小さな木の札を差し出した。受け取れ、というより置いていく、という動作であった。汐が振り返ったときにはもう立ち去っていた。
吾輩は賄い場の棚の上から、これを見ていた。
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