建安元年(西暦一九六年)の秋、一人の男が洛陽を出発した。
正確に言えば、その男は皇帝であった。しかし「出発」という言葉はほとんど正確ではない。逃亡と言うべきだったかもしれない。あるいは流浪と言うべきだったかもしれない。いずれにせよ、漢王朝第十四代皇帝・劉協、諡して献帝と呼ばれるこの若者は、二十年に満たない生涯においてすでに、帝位とは何であるかを骨身に沁みて学んでいた。
帝位とは権威である。しかし権力ではない。
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