夜の冷却浴は、千霧楼の中でも特に人気のない場所であった。
熱湯と霊気と欲望とが混在する浴場から廊下を二本渡り、さらに渡り廊下を経て北棟の端まで行くと、石畳の小さな中庭がある。中庭の中央には浅い石造りの池があり、昼間は空の色を映し、夜は何も映さない。ここで客が冷却浴を所望することは稀で、稀であるがゆえに、吾輩のような下働きの者が自ら来ることはさらに稀であった。
その夜、吾輩がそこへ行ったのは、疲れたからである。
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