建安元年(一九六年)秋。
曹操が皇帝を手中に収めるまでの経緯を語るには、まず洛陽の惨状から始めなければならない。
かつて天下の中心であったこの都は、董卓の軍が火を放ってより数年、廃墟同然のありさまが続いていた。宮殿の柱は焦げ、庭の池は干上がり、朝廷の官吏たちは俸禄もなく、日によっては食うものにも事欠いた。天子・献帝劉協は、そのような瓦礫の上に張った幕屋同然の御所に座り、漢室四百年の天子として朝議を主宰していた。参集する臣下の数はかつての十分の一にも満たず、礼服の繕いが間に合わず、袖に継ぎ当てをした宮廷人が玉座の前に平伏するという光景が、誰の目にも奇異に映らなくなっていた。
Create a free account to unlock all chapters. It only takes a few seconds.
Sign In FreeCreate your own AI-powered novel for free
Get Started Free