隆中という地名を、当時の人間の大部分は知らなかった。
荊州の南陽郡から少し外れた山あいに、その名の集落はあった。地図に載るほどの規模でもなく、記録に残るほどの事件も起きない、静かな丘陵地帯だった。そこで一人の青年が畑を耕しながら暮らしていた。
諸葛孔明。後の世が記憶するその名前は、建安十二年(二〇七年)の時点では、まだほとんど誰にも知られていなかった。
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