建安十三年(二〇八年)の秋、曹操は南征した。
その規模について、後世の史家は口を揃えて「前代未聞」という言葉を使う。しかし前代未聞の遠征というものは、歴史の中にいくつも存在する。前代未聞のうちの幾分かは成功し、残りは惨めに失敗する。問題は規模ではない。問題は、何を読み違えたかだ。
曹操が南へ向けたのは、二十万とも八十万とも言われる軍だった。どちらの数字も誇張を含むが、北方の草原から黄河の南岸にいたる諸侯を糾合し、中原の精兵を加えた軍勢の巨大さは疑いようがない。七月に荊州へ侵攻し、九月には劉表の後継者・劉琮が降伏した。劉備は南へ逃げ、長坂坡で壊滅的な打撃を受けながらも命だけは繋いだ。
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