数年というものは、人の一生のなかで、ときに奇妙な速度で過ぎ去る。
黄巾の乱を鎮めるために義勇軍が各地に立ち上がり、やがてその役割を終えた後、後漢の地方秩序はむしろ緩慢に溶解していった。中央を牛耳る董卓が洛陽を焼いて長安へ逃れ、反董卓連合が空中分解し、各地の刺史・太守が事実上の独立勢力として割拠し始めた時代——劉備はその時代の波間を、小舟のように、しかし沈まずに漂い続けた。
劉備という人間を論じるとき、この時期の記述は往々にして飛ばされる。英雄譚というものは飛躍を好む。草鞋職人が桃園で義を誓い、次に登場するときはすでに大きな戦の場に立っている——そういう語り口の方が、物語として気持ちがいい。しかし実際には、劉備はこの時期を、県尉、平原令、平原相と、地方の小官を転々としながら過ごしていた。絹のようになめらかな出世ではなく、木の根を踏んで進むような、それでいて確実に前へ向かっていることだけはわかる歩みであった。
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