廊下の幽霊というのは、概ね信用ならない連中だ。
三百年もこの建物に住んでいると、その手の存在には何度もお目にかかってきた。大方は自分がいつ死んだかも、なぜここにいるかも覚えていない。記憶の切れ端を抱えてうろうろし、誰かに話しかけては要領を得ず、聞く者の時間だけを無駄にする。生きている人間と比べて、特別に情報の精度が高いわけでも低いわけでもない。ただ――薄い。存在そのものが薄い。廊下の染みのようなものだ。
しかし、薄いからこそ、漏れ聞こえることがある。
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