行灯の火を入れなかったのは、明かりが要らないと思ったからではなく、立ち上がる理由を見つけられなかったからだった。
暗闇は蓮夜の周りにじっとあった。外縁区の夜の暗闇は、行政棟に近い区画のそれとは質が違う。あちらには石灯籠が等間隔に立ち、雨夜でも地面が薄く光る。こちらは光源が尽きたところから先、ただ沈んでいる。蓮夜はその暗闇の底に腰を下ろしたまま、膝に置いた手を見た。見えなかった。見えなくても、そこにあることは分かった。
弥助の手のことを考えた。
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