眠れない夜には、足が先に動く。
透は自分でもそれに気づかなかった。寝床に横になって、天井の木目を数えて、清兵衛の手記の断片を一度枕元から取り上げてまた戻して、そうしているうちに気がつけば廊下に出ていた。足袋の裏に夜の床板の冷たさが伝わってくる。本部の廊下は昼間でも薄暗いが、夜になると墨を溶かし込んだような暗さになる。月明かりが障子の一枚を白く染めていた。それ以外はほとんど何も見えない。
どこへ行くつもりなのか、透にははっきりしていなかった。
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