雨はいつの間にか上がっていた。
屋根の雨垂れがまだ時おり一滴ずつ落ちる音がしたが、それも次第に間が開き、やがて途絶えた。蔵の中は静まり返り、凛太郎は壁に背を預けたまま、眠れないでいた。
目を閉じると、夜見という名前が浮かんだ。名前というより、水底に沈んだ石のようなものだった。光も届かない場所にじっとあって、動かない。しかし確かにある。重さがある。澄江が見た夢の中の女の顔を、凛太郎は知らない。知らないのに、その女が大きな鏡を持って自分の顔を探している様子が、なぜか薄暗い像として浮かんだ。
Create a free account to unlock all chapters. It only takes a few seconds.
Sign In FreeCreate your own AI-powered novel for free
Get Started Free