
大正の世、山間の炭焼き村に育った少年・桐島凛太郎は、ある雪の朝、家族の惨死を目の当たりにする。ただ一人残された妹の澄江は、何者かの血に触れたために人でも鬼でもない狭間の存在となり、日の光を恐れながらも兄の腕の中で静かに息をしていた。凛太郎は妹を人に戻す術を求め、鬼を狩る者たちの組織「暁灯衆」へと加わる。しかし本作が描くのは戦いの熱ではなく、斬った後の夜の重さである。鬼を斬り伏せた翌朝、凛太郎は必ず一人で手を合わせる。かつて人であった者の名を、誰も知らなくとも。暁灯衆には個性豊かな仲間たちがいる——過去の罪を笑顔の裏に隠す先輩剣士・夕霧小波、言葉少なに鬼の気配を読む盲目の少女・音羽、そして鬼に肉親を喰われながらも憎しみを口にしない老剣匠・巌本徳蔵。物語は七つの章で構成され、各章にひとつの「怪異譚」が織り込まれる。鬼の出没する川沿いの廃村、花売り娘に化けた鬼、百夜の灯を辿る呪い——それぞれの怪異の裏に、人の業と哀しみが滲む。最終章、凛太郎は鬼を生み出した元凶・夜見と対峙する。だが剣を振り下ろす前に、彼はその者の「人であった頃の名」を問う。名を知ること、それが凛太郎にとって唯一の弔いであった。澄江の行方、仲間たちの傷、そして凛太郎が最後に辿り着く「斬ること」の意味が、静かな筆致で綴られる。
Use AI to generate novels in your favorite style
Get Started Free