
後漢の霊帝が崩じ、宦官と外戚が朝廷を喰い荒らした時代。黄巾の乱が燎原の火のごとく広がる中、一人の涿郡の男が静かに立ち上がった。劉玄徳――漢室の末裔を称するこの男は、英雄というよりも、時代の亀裂から這い出た執念の塊であった。関羽・張飛という二人の傑物を得た彼は、天下を語るにはあまりにも貧しく、しかしあまりにも諦めなかった。 一方、曹孟徳は漢を奉じながら漢を殺す矛盾を自ら引き受け、官渡の野で袁紹の大軍を砕いた。彼の冷徹な知性は詩を愛し、人を斬り、時代を一つの巨大な意志で塗り替えようとした。孫仲謀は江東の地に父兄の遺業を継ぎ、赤壁の炎で天下三分の現実を刻んだ。 孔明こと諸葛亮は南陽の草廬から出て、蜀の丞相となった。彼は天才であったが、天命には勝てなかった。六度の北伐、いずれも功なく、五丈原の秋風の中で灯が消えた。その死は一人の男の死ではなく、一つの理想の死であった。 本書は英雄を仰ぎ見ない。劉備の義も、曹操の覇も、孔明の智も、それぞれが時代という巨大な水流に押し流された人間の形である。勝者は必ずしも正しくなく、敗者は必ずしも美しくない。しかしその残照の中に、人間が時代と格闘した痕跡だけが、静かに輝き続ける。
Use AI to generate novels in your favorite style
Get Started Free